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孤独hack

”おひとりさま”人生にをちょっとラクに

こうしてゾンビは生まれましたとさ

とある男性、田中くんはいつも1人ぼっちだった。何にも期待せず、ただ時間だけが過ぎていく。きっと人生に意味とか、そういったたいそれた何かなど無いのだろうと思っていた。

 

田中くんは生きる事に疲れていた。今の日本は、「ただ生きる」にしてはあまりにもしんどい。労働は長く過酷で、考える暇も無い。生きるために生きなくてはいけない。

 

そのまま10年が過ぎ、そんな田中くんの給料は高くなっていた。十分暮らせるくらいになっていた。でも、田中くんは満たされない。いくらお金をもらっても、自分のために使えない。自分のために10年コツコツ。自分のために頑張る事が、だんだんとバカバカしくなってきた。

 

そんな田中くんは、恋に落ちた。笑顔がとびきり輝かしい人だった。こんな笑える人が、同じ人間だなんて。田中くんは不思議な気持ちになった。この笑顔には、無限の価値があるな。そう思った。

 

田中くんはそんな彼女とお付き合いをし始めた。それは素敵な日々だった。田中くんは、日々の生活に輝きをもらった。本当に些細な事で、思いっきり笑ってみせる彼女は、田中くんの心を笑顔にした。田中くんは、この人と会えて良かったと心の底から思った。この人のためなら無限に努力できる、本気でそう思った。この人のためになら、地獄のような場所でも死ぬまで生き続ける事ができると思った。自分のためじゃなくて、この人のために頑張ろうと思った。

 

そのまま4年の歳月が流れた。彼女はいなくなってしまった。田中くん、また独りぼっち。めまいがした。信じられなかった。田中くんは頑張る理由を見失ってしまった。

 

田中くんは今、何も考えずに生きている。生きる目的も、努力する理由もない。田中くんは何も感じない。楽しい事、悲しい事、嬉しい事、ムカつく事、何も感じない。彼女の感情が、田中くんの感情になってしまったのだ。彼女が嬉しければ、田中くんは嬉しかった。彼女が悲しければ、田中くんは悲しかった。

 

ただ日々が過ぎていく中で、田中くんはひたすら立ちすくんでいる。倒れる勇気はない。いや、正確に言うと倒れる理由もない。前には進めないが、立っている事くらいならできる。

 

田中くんは今、何も感じないで生きている。死んでいるのと何も変わらない。まるでゾンビのように、田中くんは過ぎ行く景色の中、ただ立っている。